
司法書士が個人事務所を開業するには?法人との違いやメリット・デメリットを解説
司法書士として独立して働くことを考えたときに、まず決めなければならないのが、「個人事務所」か「司法書士法人」かという開業の形です。
しかし、「個人事務所と司法書士法人はどう違うのかよく分からない」「自分にはどちらが合っているのか判断できない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、個人事務所と司法書士法人の違い、それぞれのメリットとデメリットについて、わかりやすく解説します。
司法書士として開業するなら「個人事務所」または「司法書士法人」

司法書士として独立して仕事を始めるとき、まず考えるべきことは「どのような形で開業するか」です。
個人で開業するか、それとも法人として複数人で事務所をつくるかによって、仕事の進め方や今後の展望も変わってきます。
司法書士として独立する際に選べる開業形態には、主に次の2つがあります。
- 個人事務所
- 司法書士法人
以下からは、各項目について詳しく説明します。
個人事務所
個人事務所とは、司法書士がひとりで開業して運営するスタイルのことです。
事務所の名前にはたいてい「〇〇司法書士事務所」と、開業した本人の名前が入ります。
個人事務所の特徴は、自分のペースで仕事を進められる自由さです。
また、開業に必要な手続きが比較的簡単で、資金面でも負担がかかりにくいというメリットがあります。
ただし、開業したばかりの頃は特に、お客さまの対応から営業活動、書類作成まで、すべてを一人でこなす必要があるため、忙しくなることは覚悟しておくべきです。
その一方で、誰かに許可を取る必要がなく、自分の判断ですぐに動ける軽さがあるのは魅力です。
司法書士法人
司法書士法人とは、2人以上の司法書士が共同で立ち上げて、会社のように組織的に運営する事務所のことです。
司法書士法人という開業スタイルは、事務所そのものに「法人格」という法的な資格が与えられる点が、個人事務所とは異なります。
法人格があることで、信用を得やすくなり、大きな会社や金融機関などからの依頼を受けやすくなるという特徴があります。
また、複数人で仕事を分担できるため、事務所を大きくしていきたいと考えている方にとっては、有力な選択肢になるでしょう。
法人を設立するには、2名以上の司法書士が必要で、法務局での登記(正式に登録する手続き)が必要です。
さらに、法人になると税金の面で有利になることもあり、組織として長く安定して活動したい方にも向いています。
司法書士の個人事務所のメリット・デメリット

個人事務所で開業することには、自由さという利点があります。
ただし、自由さに伴って注意しておくべき点もあります。
そのため、開業前には次のことをしっかり知っておきましょう。
- 個人事務所のメリット
- 個人事務所のデメリット
以下からは、個人事務所で開業する場合の良い点と注意点について、それぞれ詳しく説明します。
個人事務所のメリット
個人事務所で開業することで得られる主なメリットは、以下の通りです。
- 自由度が高い
- 意思決定が早い
- 営業活動の自由度が高い
- 初期費用を抑えやすい
- 人件費がかからない
一番の魅力は、すべてを自分の判断で決められる自由さです。
そのため、たとえば子育てや親の介護をしながらでも、自分の都合に合わせた働き方が可能になります。
営業活動に関しても、誰かに相談したり許可を取ったりせずに、自分に合ったやり方をその都度選べるため、柔軟でストレスが少ないのも大きな利点です。
また、自分一人で決めて動けるので、決断から行動までのスピードも早く、機動力がある働き方ができます。
さらに、事務所をつくるための費用や、人を雇うための給料(人件費)などを抑えやすいという点も、個人事務所の魅力です。
個人事務所のデメリット
個人事務所には良い点も多いものの、以下のようなデメリットもあります。
- こなせる仕事量に限界がある
- スケールアップに限界が生じる
- 信用面で法人に劣る場合がある
- 孤独になりやすい
まず、一人で業務を進めるため、物理的に対応できる仕事量に限りがあるという点が挙げられます。
また、「事務所を大きくしたい」と思っても、人を増やさないかぎりは業務の拡大が難しくなるため、長期的な成長には制限が出てきます。
さらに、大手企業や金融機関などと仕事をするときに、個人事務所は法人と比べて信頼性で不利になる可能性があることも知っておくべきです。
たとえば、規模の大きな契約では「一人で全責任を持てるのか」といった不安を持たれたり、取引先の社内ルールによって「法人とのみ契約可能」と制限されるケースもあります。
また、長期にわたる案件では、「個人では対応が途中で止まる可能性がある」といった懸念を持たれることもあるのです。
そして、仕事の計画、実務、営業などをすべて一人で担うことになるため、精神的にも孤立しやすい傾向があります。
そのため、同業者や他士業とのネットワークを持っておくことが、心の支えや業務上の助けにもつながります。
司法書士法人のメリット・デメリット
司法書士として独立するとき、「法人」という形で開業する方法もあります。
司法書士法人とは、2人以上の司法書士が一緒に事務所をつくって、組織として動かす働き方です。
法人をつくるにあたっても、次のことを知識として覚えておきましょう。
- 司法書士法人のメリット
- 司法書士法人のデメリット
ここからは、司法書士法人のメリット・デメリットをそれぞれ詳しく解説していきます。
司法書士法人のメリット
司法書士法人のメリットは、以下の通りです。
- 信用力が高い
- スタッフ採用がしやすい
- 業務の分担ができる
- 節税効果が見込める
まず、法人として開業すると、「組織として動いている」という信頼感を相手に持ってもらいやすくなります。
そのため、銀行や会社などの大きな依頼先からも声がかかりやすくなります。
また、スタッフを雇いやすくなり、仕事を分担して効率的に進められる体制が作りやすいのも特徴です。
複数の司法書士がそれぞれの得意分野を担当できるようになると、事務所全体としての対応力も高まります。
さらに、法人は税金の仕組みが個人よりも有利になることがあり、結果として手元に残るお金が増えることもあります。
司法書士法人のデメリット
司法書士法人のデメリットとしては、以下が挙げられます。
- 複数名の司法書士で設立しなければならない
- 登記や維持に費用がかかる
- 意思決定に時間がかかることがある
- 管理業務が増える
まず、司法書士法人をつくるには、最低でも2人以上の司法書士が必要です。
つまり、一人では始められません。
また、法人を設立するには登記(役所に正式に登録する手続き)が必要で、その費用や書類作成などにかかる手間もあります。
運営を続けていくための維持費も、個人事務所より多くなりがちです。
組織で動くため、一人で決めてすぐ動くことが難しくなることもある点にも注意が必要です。
また、人事や経理などの管理業務も増えるため、リーダーとしてのマネジメント力も求められます。
司法書士の個人事務所の開業に関するよくある質問
ここからは、司法書士の個人事務所の開業に関して、よく寄せられる次の質問に、回答していきます。
- 司法書士法人は一人でも設立できる?
- 司法書士法人は登記しなければならない?
- 開業後に法人化することはできる?
- 開業形態によって年収は変わる?
- 司法書士法人のほうが依頼されやすい?
それぞれの質問について、順に回答していきます。
司法書士法人は一人でも設立できる?
できません。
司法書士法人をつくるには、2人以上の司法書士が必要と法律で決まっています。
そのため、一人で開業するなら「個人事務所」としてスタートすることになります。
司法書士法人は登記しなければならない?
はい、必ず登記が必要です。
登記とは、法務局という役所に法人の情報を正式に登録することです。
登記をしなければ、法人としては活動できません。
開業後に法人化することはできる?
はい、できます。
最初は個人事務所としてスタートし、仕事が軌道に乗ってきたあとで法人に移行するという方法も一般的です。
法人にすると費用や手続きは増えますが、組織としての信頼性が上がり、人を増やして事業を広げたい方には向いています。
開業形態によって年収は変わる?
変わることがあります。
個人事務所では、収入はすべて自分のものになりますが、働ける時間や仕事量には限りがあります。
一方、法人では、収入の一部は事務所に残しておく必要があるものの、組織として仕事の量を増やせるため、結果として高収入につながる可能性があるのです。
司法書士法人のほうが依頼されやすい?
企業や大きな案件に関しては、法人のほうが信頼されやすいという傾向があります。
ただし、個人事務所でも地域密着の営業や得意分野を活かす方法で、十分に依頼を受けることができます。
特に、現代ではWeb集客の重要性が高まってきています。
このため、時代の流れとニーズに合わせ、Web集客を積極的に活用していくことが必要不可欠といえます。
Web集客にはさまざまな方法があります。
しかしながら、専門的な知識や時間が必要となる部分が多いため、自分だけで行えない部分は、プロに依頼するのがおすすめです。
大切なのは、自分に合った営業のやり方や、専門性をどのように発信していくかという工夫です。
司法書士が個人事務所や法人での開業を失敗しないためのポイント

ここまで、司法書士の開業形態について、個人事務所と司法書士法人の違いと、それぞれのメリット・デメリットを解説してきました。
次に大切なのは、実際に独立したあとに失敗しないために、どんな準備や心構えを持つべきかということです。
開業の形に関係なく、意識しておくべき重要な考え方は次の通りです。
- 自分に合った開業形態を選択する
- 開業までの期間で実務経験を積んでおく
- 業務の中で得意分野を明確化する
- 資金計画と経営戦略を十分に練っておく
- 人脈を活かし、他士業や異業種とも連携する
- Web集客を効果的に活用する
以下からは、開業で失敗しないためのポイントそれぞれを順に見ていきましょう。
自分に合った開業形態を選択する
まず重要なのは、自分にとって無理のない働き方を選ぶことです。
たとえば、「自分の裁量で自由に動きたい」「一人でじっくりお客さまと向き合いたい」という方には個人事務所が合っています。
一方、「将来は人を増やして規模を広げたい」「企業案件を多く受けたい」という方には司法書士法人が向いているでしょう。
目先のことだけではなく、5年後・10年後にどうなっていたいかという将来像をしっかり思い描いたうえで、開業形態を選ぶことが失敗を避けるポイントになります。
開業までの期間で実務経験を積んでおく
資格を取ったらすぐに開業できるとはいえ、経験が不足している状態でいきなり独立するのはリスクが高いといえます。
実際の登記手続きやお客さま対応、書類作成などをしっかり経験しておくことで、独立後に慌てることなく業務を進められます。
また、勤務していた事務所で築いた人脈が、将来の紹介や仕事の協力関係につながることも多くあるのです。
焦らず、数年かけて着実に経験と信頼を積み上げることが、安定した開業につながります。
業務の中で得意分野を明確化する
司法書士の仕事には、不動産登記、会社設立、相続、債務整理など、さまざまな分野があります。
何でもできるのは悪いことではありませんが、「この分野ならこの人」と思われる専門性を持つことは、強みになります。
たとえば、「相続登記が得意です」と明確に打ち出せば、その分野で困っているお客さまに選ばれやすくなります。
また、SNSやブログでその分野の情報を発信すれば、専門性と信頼感が伝わり、相談のきっかけになるでしょう。
競合が多い中で選ばれる存在になるためにも、「自分は何が得意か」を早い段階で意識しておくことが大切です。
資金計画と経営戦略を十分に練っておく
開業には、事務所の家賃、備品、登記や登録の手続きなど、まとまったお金が必要です。
さらに、開業してすぐに収入が安定するわけではないため、生活費も含めて半年〜1年分の資金を見込んでおくのが安心です。
また、ただお金を用意するだけでなく、「どんな仕事を中心にして」「どのようにお客さまを獲得していくか」といった経営の方向性を明確にしておくことが重要です。
もし、融資や補助金を使って資金を集める場合には、しっかりした資金計画や事業計画書が必要です。
計画および書類の作成には、収支の見通しや営業戦略など、数字に裏付けられた内容とすべきです。
自分のビジネスを客観的に見直す力を持つことが、長く安定して経営していくうえでの土台になります。
人脈を活かし、他士業や異業種とも連携する
司法書士の業務は、他の専門家との連携で、個人で進めるよりも広がります。
たとえば、税理士や行政書士、弁護士とつながっていれば、お互いに仕事を紹介し合ったり、ひとつの案件にスムーズに対応できる体制を作れることでしょう。
また、不動産会社や保険会社、銀行などの異業種と関わることで、新しいお客さまとの出会いも増えます。
独立前から、交流会や勉強会に参加して関係を築いておけば、開業後に支えとなるはず。
「ひとりで仕事をする」=「孤立する」ではなく、周囲と協力しながら活躍する姿勢が大切です。
Web集客を効果的に活用する
今の時代、司法書士の仕事でもインターネットを使った集客(Web集客)が重要です。
ホームページを持ち、自分の得意分野や考え方を発信することで、「この人に相談してみよう」と思ってもらえるきっかけになります。
たとえば、将来のお客さまは「相続登記 ○○市」のように地域とサービスを組み合わせた言葉で検索されるかもしれません。
そうした需要があるときに、検索結果の上位に表示されることを見越して、ブログなどを使って情報発信をするのが効果的です。
このような方法を「SEO対策(検索で上位に出るように工夫すること)」と呼びます。
もし、需要を抱えたお客さまが自分のHPを訪れたのであれば、そこから気軽な相談や問い合わせにつなげられるでしょう。
SEOは専門知識が必要なことも多く、自分で対策するのが難しい場合は、プロの力を借りると楽です。
特に開業初期は、効率的にお客さまとつながる仕組みを作ることが、安定した集客への近道になります。
司法書士の開業は自分に合った事業形態を選ぼう
今回は、司法書士の独立開業にあたって、「個人事務所」と「司法書士法人」の違いや、それぞれのメリット・デメリットなどの特徴を詳しく整理しました。
司法書士の開業には2つの形がありますが、どちらが正しいというものではなく、自分の価値観や将来像に合った選択が重要です。
自由な働き方を重視するなら個人事務所、組織的に成長を目指すなら司法書士法人が適しています。
ただし、どちらを選んでも安定して仕事を得るには、Webを活用した集客の仕組み作りが欠かせません。
ホームページやSNSによる情報発信は、現代の司法書士にとって重要な営業手段です。
とはいえ、それらを自力で整えるのは時間も知識も必要で、負担を感じる方も多いはずです。
そこで、私たちドットアンドノードでは、司法書士のためのWeb集客支援を専門的にご提供しています。
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開業成功の第一歩は、自分に合ったかたちで確実に動き出すことから。
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